「いつもならすぐ完食するのに、最近残すようになった」
「朝ご飯をあまり食べなかったけど、大丈夫かな…」
シニア期に入った犬と暮らしていると、こんな不安を感じる瞬間が増えてくるかもしれません。トリマーとして多くの飼い主さんから食事の変化についてよく相談されます。
でも、多くの場合はちょっとした工夫で食べてくれるようになりますので安心してください。今日は、現役トリマーの私が実際にサロンのお客さんにもおすすめしている、シニア犬の食事の工夫を詳しくお伝えします。
なぜシニア犬は食欲が落ちやすいの?
まず知っておきたいのは、シニア犬の食欲低下には体と感覚の自然な変化によるものがあるということです。
犬は7歳前後からシニア期に入るといわれています。この時期になると、私たちが年齢を重ねるのと同じように、犬の体にもさまざまな変化が起きてきます。
食欲に関係する変化で特に大きいのが、嗅覚・味覚の衰えです。犬はご飯を食べる時、まず鼻で「においを確認」してから口に入れます。人間以上に嗅覚に頼って食べているので、においがわかりにくくなると、食欲自体が落ちやすくなります。
実際、私の愛犬もシニアになり、一生懸命クンクンと嗅いでいるのに近くにあるおやつに気づかない姿を見ることが増えました。嗅覚の衰えをひしひしと感じています。
もちろん、病気のサインとして食欲が落ちていることも考えられます。毎食残すようになった場合は、まず動物病院の受診をおすすめします。
シニア犬の食欲が落ちる主な原因
食欲低下の原因はひとつとは限りません。いくつもの原因が重なることもよくあります。考えられる原因を見ていきましょう。
1. 嗅覚・味覚の低下
加齢とともに嗅覚と味覚が衰えます。特に嗅覚への影響が大きく、同じフードでも「魅力的に感じにくくなる」ことがあります。元気な頃と同じフードなのに急に食べなくなった場合は、においが伝わりにくくなっているサインかもしれません。
2. 消化機能の低下
シニア期になると消化酵素(=食べ物を分解する物質)の分泌が減り、一度に多く食べると胃腸に負担がかかりやすくなります。少量しか食べなくなるのは、体が「これくらいが楽」と感じているサインかもしれません。
人間も年齢を重ねると、若い頃のように食べると胃もたれするようになることがありますよね。犬のシニア期にも、同じようなことが起こっていると考えられます。
3. 同じフードへの「飽き」
人間でも毎日同じものを食べ続けると飽きることがありますよね。犬も同じで、長年同じフードを続けていると食いつきが落ちることがあります。においや食感のバリエーションを加えてあげるだけで、食欲が戻ることがあります。
4. 運動量の減少と代謝の変化
シニア期になると活動量が落ち、エネルギー消費も減ります。寝ていることが多くなり、それほどお腹が空かないため、自然と食べる量が減ることもあります。これ自体は正常な変化なので、量が減っても焦らず、その子のペースに合わせてあげることが大切です。
5. 食べる姿勢の問題
シニア期になると関節の硬さや首・背中のこわばりが出てくることがあります。床に置いた食器に頭を下げて食べるのが辛くなっている可能性もあります。
シニア犬の食欲が落ちた時の7つの工夫
私自身が試して、またサロンのお客さんにもおすすめしている方法をご紹介します。
工夫① フードを少し温める
これが一番手軽で、もっとも効果を感じやすい方法です。ドライフードに少量のぬるま湯をかけて人肌程度(38〜40℃くらい)に温めると、フードのにおいが立ちやすくなります。電子レンジで10〜15秒ほど温めるだけでも変わります。
温める時は「熱くなりすぎないように」指で触って確認してからあげましょう。
工夫② ドライフードをお湯でふやかす
口腔内に問題がありそうな子や、ドライフードをあまり噛まなくなった子には、お湯でしっかりふやかすのが効果的です。
固いフードを噛むのが辛い場合、食べる動作自体がストレスになっていることがあります。ふやかすことで食べやすくなり、においも立ちやすくなるので一石二鳥です。最初はいつもの半量くらいをふやかして試してみるのがおすすめです。
工夫③ トッピングをのせる
フードの上に少量のトッピングを加えることで、食いつきがぐっと上がることがあります。
おすすめのトッピング例:
- ボイルした鶏むね肉を細かくほぐしたもの
- 少量のウェットフード
- 犬用スープ(市販品)をかける
- かつお節(犬用・塩分少ないもの)
- 犬用のふりかけ
お店でもシニア犬の飼い主さんに「鶏むね肉トッピング」をおすすめすることが多いです。スーパーで手軽に調達できるので、ぜひ試してみてください。
最初はほんのひとつまみ程度から始め、フード自体を食べることを大切にしましょう。
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工夫④ 食器の高さを調整する
市販の犬用食器台(フードスタンド)を使って、食器の高さを上げると、食べやすくなることがあります。食器台は犬の肩の高さが目安です。犬が立った状態で、首を少し下げたくらいで食事ができるようにしてみましょう。
姿勢が楽になるだけで食べる量が増えた、というケースをサロンのお客さんからよく聞きます。食器台がなければ、安定した台(空き箱などでOK)の上に食器を置くだけでも試せますので、すぐ実践してみてください。
工夫⑤ 1日の食事を少量多回に分ける
シニア犬は消化機能が低下しているため、1回の量を多くするより、少量を複数回に分けるほうが胃腸にやさしくなります。
たとえば、1日2回だったのを3回、4回と分けるだけでも、食事への取り組みやすさが変わります。
「1回の量が少なくて大丈夫?」と不安に思うかもしれませんが、今までの必要量を「一日かけてちょっとずつ食べる」ので必要なカロリー、栄養は取れるので安心してくださいね。
工夫⑥ 食器のサイズ・形を見直す
食器のサイズや形で食べやすさが変わります。口が大きく広がった浅めの食器のほうが食べやすいと感じる犬が多いです。
シニアになってから急に食べなくなった場合、一度食器を変えてみるだけで改善することもあります。
実際、私の愛犬は深いお皿の場合、残すことが増えた経験があります。浅いお皿に変更したところ残さずに食べてくれるようになりました。
工夫⑦ 手作り食を取り入れる
市販のフードへの食いつきが落ちてきたシニア犬には、手作り食を取り入れることも有効な選択肢のひとつです。
手作り食の最大のメリットは、香りがよく、味変しやすいため犬が毎日の食事をより楽しんでくれます。ドライフードには見向きもしなかった子が、温かい手作りごはんには一気に食いついたというケースや、以前より生き生きして見えるとサロンのお客さんからもよく聞きます。また、柔らかく仕上げることで歯や顎が弱くなったシニア犬でも食べやすく、飼い主さんも何が入っているか把握できるという安心感もあります。
シニア犬向け手作り食のベース例:
- 鶏むね肉・ささみ
- にんじん・キャベツ
- かぼちゃ・さつまいも
- 鶏や野菜のゆで汁(スープ)をかけると食いつきがさらにアップ
ただし、手作り食だけで必要な栄養素をすべて補うのは難しく、カルシウムやビタミン類が不足しがちです。いきなり完全手作りに切り替えるのではなく、まずは今のフードにトッピングとして加えるところから始めるのがおすすめです。また、急な切り替えは胃腸への負担になるため、少量ずつ慣れさせていくことが大切です。
手作り食については別記事でも詳しく解説しています。ぜひ参考にしてみてください。
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犬の手作りごはん入門|メリット・デメリットと始め方
2026/4/30
犬の手作りごはんのメリット・デメリットをトリマー歴10年が解説。ドライフードとの違い、始めるときの注意点、無添加の市販フード3選も紹介します。
まとめ:小さな工夫が、シニア犬の食事を楽しくする
シニア犬が食べる量が減ってくると、「病気かな」「何かあったのかな」と心配になりますよね。その気持ちはよくわかります。
でも多くの場合、今回ご紹介した7つの工夫を試すことで食べてくれるようになります。大切なのは、「食べること自体を楽しい体験にすること」です。トリマーとして10年間、たくさんのシニア犬と関わってきましたが、食事の工夫で元気を取り戻したワンちゃんたちをたくさん見てきました。焦らず、少しずつ試してみてくださいね。
もし食欲低下が長引く場合や、元気がない・水をあまり飲まないなど他の気になる変化がある場合は、かかりつけの獣医師さんに相談することをおすすめします。
シニア犬との暮らしに役立つ記事を他にも書いています。ぜひ他の記事も読んでみてください。